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◾豚のロースト
豚のローストは豚肉を焼いて、オーブンで火を入れる料理です。
一般的に使われる、豚の部位「ロース」は火を入れ過ぎるとパサつきやすく、実は意外と家庭ではローストするのが難しい部位。
星付きのレストランでもあれ?っと思う火の入れ加減で出てくることもあるくらい。
「肩ロース」の方が火を入れすぎてもパサつきにくいし、味もしっかりしている部位なので美味しく食べれるかもしれません。
◾肉の選び方
ロースなら脂身が真っ白で、肉は綺麗なピンク色でしまりがあってサシが入っているものが良いです。水っぽくないものの方が日持ちもし、味わいも凝縮感があります。「イベリコ豚」やブルターニュ産、日本なら「和豚もちぶた」、「かごしま黒豚」、「ハーブ豚」などがおすすめ。
肩ロースは赤色が綺麗で、脂身と赤身が3対7位の割合になっているものがバランスが良いです。こちらも水っぽくなく、しまりのあるものが良質です。
日本は比較的鮮度の悪いものはないので安心ですが、フランスでは自分で良く見て選らばないと平気で鮮度の悪いものを渡されることがあるので注意が必要。
◾火の入れかた
肉の火の入れ方は人によって様々な考え方あり、焼き方や味の付け方1つとっても無数にあります。表面を焼いてからオーブンに入れるやり方。オーブンに入れて、出してを繰り返すやり方。焼いてからサラマンドルという天火だけのオーブントースターみたいなので転がしながら火を入れるやり方。真空して63度の湯煎で火を入れてから焼くやり方など。。。
それぞれに意味があるし食材の状態や、完成形のイメージにもよるのでその都度どの火の入れかたがベストなのか、を考えて選択する必要があります。
例えば真空で火を入れてから表面を焼く場合、まず失敗がなく、大量に作るときに安定するし肉の全体が「ロゼ」になりジューシーに仕上がります。その反面焼けた香りや水分の蒸発による凝縮感がなく、良くも悪くも綺麗な仕上がり。
豚に関してフランス料理では良い火入れ加減は「ロゼ」と言われ、ピンク色。それより火入れが手前だとブニブニして歯切れが悪く逆に固く感じてしまう。

◆例えば1,2kg位の豚ロースの塊をローストする場合。
まず、岩塩で前日からマリネする方法は、後で塩抜きで水にさらして味が抜けるのと水っぽくなるのが嫌なので煮込み料理などならいいと思いますが、ローストのときぼくは選択しません。
①脂身の厚すぎる部分を削って格子状に切り込みを入れます。常温に戻す。
寒い場合はビニール袋かジップロックなどに入れ、水道のお湯につける。
(牛ヒレ肉のステーキ100g位の焼き加減「レア」は袋に入れて40度位の水道水に20分つけて、表面を焼くと出来る。)
②肉の1%の塩と胡椒をする。
③脂身からゆっくり焼いて脂を溶かし出す。皮付きのにんにくを潰して入れて、にんにく油の中で香りをつけるように焼く。脂身が焼けたら全体を焼く。焼きすぎると固い部分が多くなってしまうから、脂身以外は色をつけることにこだわりすぎず、焼きすぎない。にんにくが焦げそうになったらはずすか、肉の上にのせておく。
④網付きのバットにうつし、タイム、ローリエ、にんにくをのせて、焼き油をかけてオーブン150~170度位で10分入れる。出して上下を返して温かいところに置いて10分休ませる。5分入れる、返して5分休ませる。これを火が入るまで繰り返す。
*厳密にいうと休ませる間は網バットの余熱で火が入ってしまうので、休ませる用の網バットを用意しておくと良い。
鉄串を5秒位刺して火傷しないよう下唇の下の温度に敏感な部分に当て、中の温度を確認する。中心が温かくなってきたら時間を短くして調節する。
*安全面での目安として肉の中心が63度で30分程度かそれに相当する加熱が定められているので慣れない人は芯温計を使うのが便利かつ安全で、失敗しにくいと思います。
かっこ良くて使いやすい、コンパクトな芯温計。
まわりにしか塩、胡椒をしていないので、切ってから肉の断面に少しフルールドセルと、ミニョネットをすると味がのってくるし、フルールドセルの食感もアクセントになって美味しい。
パサつきをおさえてジューシーさを補うために豚のジューソースなどがシンプルに美味しく食べれておすすめです。

火入れに関してはそれぞれのシェフがこだわりを持っていて、お店の設備やオペレーションと相談しながらベストな方法を選択しています。
やはりぼく的には、真空して火を入れてから焼くだけではなくて、焼いてからオーブンでローストして、中に肉汁を閉じ込めながらこうばしい香りや凝縮感がありつつ、しっとりやわらかな状態が理想なのでこういうやり方をしています。
やっぱりローストした肉を食べるってこういうこと!って実感できる火の入れかたで、ぼくは好きです。ただ、もっといいやり方があったら教えてほしいです。